コンテスト発表
last update 2022.09.16
■渋谷撮り尽くしコンテスト(2022年7月5日審査)
上位作品講評(関東本部事務局長・池永) とりかえ)
◆最優秀賞「夜練」
夜になる少し前のほんのりとグラデーションがかかる空の色が効いている。高層ビルを背景に自由を求める若者の姿がどこか切なく浮かび上がってくる。撮影では通常避けてしまいそうな金網をあえて全面に写し込むことで、夜の街の片隅で享楽する若者たちの陰にある閉塞感や都市に生きる息苦しさも伝わってきた。人物にピントを置かず、不明瞭な雰囲気を残している点も奏功している。今という時代を深く感じさせる一枚だ。
◆優秀賞「恋人募集中」
巨大な看板広告が並ぶ雑とした空間とマリリン・モンローが描かれた派手なシャツが、強烈なインパクトをもたらす。渋谷という街をストレートに捉えた被写体選びとフレーミングが際立った。空を見つめながら日差しを浴びて思いにふける金髪の人物とアイドルの看板の前で無邪気にポーズする女性の姿が交錯して想像力をかき立てる。
◆朝日新聞社賞「共棲」
新旧入り交じる複雑な街の一角を切り取り、撮影者自身の視点を明確に映し出した。再開発が進み、新たな高層ビルが建ち、急速に変容する渋谷は活気がある一方で、絡み合う配線や配管が昭和の名残をとどめている。目新しさだけではない大都市を、カメラを手に別の角度から見つめることで出合う社会の一端や風景がある。
◆全日本写真連盟賞「マークのある道路」
アスファルトの上に引かれた白線は、人工的な道路に描かれた幾何学模様のようだ。薄らとぼやけたフェンスだろうか、映り込みが効果的で、変わりゆく街と行き交う人間の揺らぎを感じさせてくれる。斜光線と構造物や人物から伸びた影も、クールな都市風景の一部になって空間を和らげ、全体的な雰囲気を構成する大切な要素になっている。
◆東京都本部長賞「おはらダンサーズ」
コロナ禍で2年連続中止だった渋谷・鹿児島おはら祭りが今年は開催された。大きな口が描かれたマスク姿で元気に踊る女性たち一人一人の表情が滑稽で、単純に面白い。新型コロナウイルスの感染が広がり、難しい時代を生きる私たちにとって、大勢の仲間たちとにぎやかに集えること、笑うことの楽しさや喜びを改めて教えてくれるワンシーンだ。
◆フォトアサヒ賞「幻影」
洗練されて整った街の中で、ふと戸惑い、不安に駆られる一瞬というのだろうか。何もかもが明確で完璧そうな都市の中に、静かに息づく定まらない何かをぼやける風景やにじむ人影で捉えたような心象的な作品だ。現代社会を表現するのにふさわしい情感と雰囲気をうまく切り取った。大部分が青っぽい色合いでまとまっているのも、静寂を深めていて心地よい。
■入賞・入選者(敬称略)
●最優秀賞 夜練 戸津井直次郎(埼玉県)
●優秀賞 恋人募集中 並木 良枝(千葉県)
●朝日新聞社賞 共棲 長谷川 護(東京都)
●全日本写真連盟賞 マークのある道路 中野 雅子(神奈川県)
●東京都本部長賞 おはらダンサーズ 高村 和恵(千葉県)
●フォトアサヒ賞 幻影 住 由子(埼玉県)
●特 選 ソーシャル ディスタンス 井上 怜史(東京都)
●特 選 悲しい別れ 長部 忠夫(埼玉県)
●特 選 わたしの通学路 松居 正(東京都)
●入 選 まだ見ぬシブヤへ 小沼 真幸(東京都)
●入 選 発展途上 新妻 秀敏(神奈川県)
●入 選 目が釘付け 梁田 常子(東京都)
●入 選 ファッション 平川 勇(東京都)
●入 選 渋谷育ち 宮崎 雅代(埼玉県)
●入 選 溢れる情報 矢野 直孝(神奈川県)
●入 選 帰り道 佐々木 美由紀(東京都)
●入 選 230mからの大パノラマ 井関 正敏(神奈川県)
●入 選 期待 楠瀬 彰彦(東京都)
●入 選 お店なのかな? 小林 一久(静岡県)
●入 選 赤い唇 一瀬 富佐男(埼玉県)
●入 選 路上カフェ 金子 昌子(東京都)
●入 選 休憩中 山田 稔(東京都)
●入 選 酔い闇 樋口 逸見(埼玉県)
●入 選 網目の中 御代田 雅邦(東京都)
●入 選 光に向って 岩崎 茂樹(神奈川県)
●入 選 CAT WOMEN 田中 雅子(千葉県)
●入 選 久し振りのお祭り気分 小島 爲玖生(神奈川県)
●入 選 見返りマスク美人 山岡 美知子(東京都)
●入 選 Shibuya Girl 大和 かすみ(東京都)