写真家 関東本部委員 赤城耕一氏
講評 (敬称略)
最優秀賞「ビルの狭間」
鳥羽 明 お茶の水にある歴史的な大聖堂「ニコライ堂」を写した作品です。ドーム型の優美な屋根の美しさが特徴ですが、高い位置からの撮影で歪みもなく、威厳すら感じます。歴史的な建築物の写真はいつでも撮れる、新鮮味がないと軽んじられます。しかし、この作品はモノクロ化による繊細なディテール再現と同時に、周囲の建物のあり方や、空、光の状況を見ることが重要なのです。建物の狭間からこの季節、この時間の光の力によってしか表現できないニコライ堂の姿こそ、現代の東京の風景の表現に最も有効な事象であったことを示しました。
優秀賞 「黄昏」
佐々木 美由紀ダイナミックな画面構成に引き寄せられてしまいました。夥しいほどのポピーの花、建物ではなく、水平の橋の向こう側に太陽が沈むところを見ることができること。夕日の美しさ。いずれも発見の目ですが軽い驚きを感じます。彼方に見えるスカイツリー、シャドーになった点景人物も効いています。あらかじめロケハンを行い、想定した上での撮影だったとしても問題はありません。予知能力を鍛えた撮影者にのみプレゼントされた光景がここにあります。
朝日新聞社賞 「必ずマルになる場所」
相馬 達也 近代的な都市空間を捉えています。大きな輪はオブジェだと思いますが、この輪の存在のためでしょうか、不思議な遠近感が生まれ、見る側にどこか異界に紛れ込んだような錯覚すら感じさせ、視線は写真の中をあちこちさまようことになります。偶然かと思いますが、登場人物のポジショニング、信号の色や位置、空間構成、光の捉え方も見事です。こうした不思議なことが街で起こるのも東京という都市の特徴かもれません。
全日本写真連盟賞 「コロナ禍の下で」
大川 正宏 よさこいの練習に参加した若者なのでしょうか。決まったメイク、アイラインによって強調された瞳、赤いマスク。写真的なお膳立ても万全ですが、コロナ禍による窮屈な規制の中における2021年の東京の若者の姿を見事に捉えました。ポートレートとしても秀逸な作品ですが、マスクひとつだけで、撮影者にも被写体の若者にも、それを見る私たちにも「写真記録」という意味の重要性をあらためて教えてくれるようです。10年後、私たちはこの写真をどう見るでしょうか。
東京都本部長賞 「静寂の時」
小沼 真幸 「シーン」という“音” が聞こえてきそうな作品です。私たちは皇居の堀や石垣をいつもの東京の風景として見ています。けれど、夜の皇居の風景をどれだけの人が知っているでしょうか、この作品は新鮮に感じました。24時間動き続ける東京の喧騒は夜中でも完全に鎮まることはなさそうです。皇居の森を、石垣を、堀の水を照らすのは、街灯、つまり人工的な光線です。この風景は怪しくも美しい人工光を利用し、写真化したことによって初めて訪れた「静寂の時」かもしれません。
高校生以下賞 「Secret」
小口 寿輝 タイトルは「秘密」という意味ですから、なんだか意味深ですが、写真の構成としては見てのとおり単純です。しかし、光と影だけでも楽しさが伝わってくるのが、この作品の良いところで、作者も友達同士で楽しく撮影しているのでしょう。それが伝わってきます。学内での規則もあると思いますが、どんなに優れた写真家でも学校内で簡単には写真を撮ることはできません。1枚でも多くの「いま」を残すことは写真にとても重要なことでると考えています。
コンテスト発表
last update 2021.11.26
■入賞・入選者(敬称略)
●最優秀賞 ビルの狭間 鳥羽 明(静岡県)
●優秀賞 黄昏 佐々木美由紀(東京都)
●朝日新聞社賞 必ずマルになる場所 相馬 達也(埼玉県)
●全日本写真連盟賞 コロナ禍の下で 大川 正宏(東京都)
●東京都本部長賞 静寂の時 小沼 真幸(東京都)
●高校生以下賞 Secret 小口 寿輝(東京都)
●特選 東京2020の春 大歳 英男(東京都)
●特選 Ginza New Year 中島 健(東京都)
●特選 チューリップの木 佐久間 俊輔(東京都)
●特選 車が小さい 和田 吉政(神奈川県)
●特選 変わりゆく西新宿 森重 淑江(東京都)
●入選 顏 矢野 直孝(神奈川県)
●入選 境内 鍵本 裕次(広島県)
●入選 憩いの広場 千葉 栄作(神奈川県)
●入選 前と後ろでシェア・マスク 長谷川 護(東京都)
●入選 趣味の時間 白石 幸伸(東京都)
●入選 岩から岩へ 吉野 平治(埼玉県)
●入選 マドモアゼルのお出かけ 有馬 良江(東京都)
●入選 宿場の人気者 池田 良二(東京都)
●入選 夜空に泳ぐ 日 猛(埼玉県)
●入選 続く赤と白の線 藤澤 仁(東京都)
●入選 今日旅立ち 西山 清志(埼玉県)
●入選 木登り大好き 高橋 範人(埼玉県)
●入選 スマイル 小松崎 武美(埼玉県)
●入選 お花見クルーズ 青木 洋(東京都)
●入選 藤色 田所 俊一(東京都)
●入選 福をゲット 野 郁男(神奈川県)
●入選 電車通過中 楠瀬 彰彦(東京都)
●入選 冬の海を臨む 宮本 利子(千葉県)
●入選 幻舞 木ア 昭(神奈川県)
●入選 お嬢さんこっち向いて 小杉 要(埼玉県)
●入選 そびえ立つ 戸津井 直次郎(埼玉県)
●入選 銀座の夜2021 中村 タマエ(東京都)
●入選 夜のエスカレータ 岡本 洋三(東京都)
●入選 道を造る 今谷 明義(神奈川県)
●入選 晴天 浅見 行男(千葉県)
●入選 風に踊る 船橋 照貴(神奈川県)
●入選 バイクで花見 戸島 照雄(千葉県)
●入選 空中散歩 北内 毅(埼玉県)
●入選 祭りの少女 住 由子(埼玉県)
●入選 明日へ向かってGo! 下新原 義弘(埼玉県)
●入選 星降る街角 畠堀 ひと美(神奈川県)
●入選 ゲリラ豪雨 立川 明(神奈川県)
●入選 幻の東京コース 岩瀬 昌子(東京都)
●入選 曙 湯原 章綱(東京都)
●入選 流れのむこう 増田 智恵(茨城県)
●入選 我が家の王子様 松浦 昭子(千葉県)
●入選 のどが渇いたよ 勝又 悦朗(静岡県)
●入選 光る橋 市野瀬 英喜(東京都)
●入選 Social Distance 藤村 禎一(東京都)
●入選 ファミリー 島田 章二(東京都)
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